説明力を磨くためにはどうしたら良いか ー原因と対策ー
はじめに
まず今回ターゲットとしている「説明」とは
- 相手に話を理解して欲しい
- 相手を納得させたい
以上2つを目的としているものである。
「議論で勝ちたい」、「セールス等で相手に何かしらの行動をとってほしい」といったケースのテクニックに関しては一部共通するものの、基本的には取扱の対象外とする。
なぜ説明が下手なのか
頭がいい = 説明が上手ではない
頭がいいはずの大学教授や専門家は全員説明が上手かと言われるとそうではない。つまりは頭の良さと、説明力は必ずしも結びつかない。
とはいえ、できるビジネスマンは総じて説明がうまい。
説明力はある種テクニックなので(= 先天的な問題ではない)、練習していくことで必ず上達していく。
相手の理解度や、相手が聞きたいことを考えていない
相手を無視した説明はうまくいかない。
たとえ緊張する場面でも、「相手がどういう目的で話を聞いているか」を意識することで、自ずと話す順番やどのような話し方をすればいいかがわかってくる。
また、「相手の理解度を考えない説明」も問題である。例え結論ファーストで説明しても、前提となる知識がない場合わかりづらい説明にある可能性がある。
考えた順番で話す
自分の頭に浮かんできたことをそのままの順番で口に出すと、結局わかりにくい説明になる。
自分が考えた順番ではなく、相手が聞きたい順番で話すことが非常に大切。
そうすることで理解しやすい説明ができる。
自分でもよくわかっていないことを説明しようとしている
頭に浮かんだ順番で口に出してしまう。これは説明している内容が自分でもよく理解できていなかったり、内容を自分の頭の中を整理できていないからだ。
説明をうまくするには相手に何を伝えるべきかをあらかじめ明確に理解している必要がある。
また、突然意見を求められるシーンでは事前に伝えたいことを整理できないことがある。そういった時は仮説思考を使ってみるといい(後述)。
説明の技術を勉強しても、全く実践しない
インプットは非常に大事であるが、実践を繰り返してく中で説明力は身に付く。必ずインプットした内容を、実際の説明の場でアウトプットする必要がある。
説明の順序について
基本はピラミッド
ピラミッド(CRF法)
結論、根拠、具体例
説明における基本の型。 大ベストセラー「1分で話せ」では、この三層構造を「ピラミッド」と表現し、ただひたすらに、結論ファーストの順序で話すよう書かれている。 自分が話すときだけでなく、話を聞くときもこのピラミッドを意識するといいらしい。
前提 → ピラミッド
前提、結論、根拠、具体例
「1分で話せ」以外の本では、結論ファーストの説明だけだとわかりずらくなるシーンがあることが言及されている。
なぜ、学校の先生の説明はわかりずらかったのか。それは我々生徒の理解度を考えていなかったり、話を理解する上で前提となる情報が足りていないからだ。
このような状態で結論ファーストで話しても、その説明は理解しにくい。
ちなみに自分が言葉にしていない部分を相手は頭の中でそれとなく補っており、それを補うために使っている知識や考え方を「共通の基盤(by Clark, 1996)」というらしい。
結論ファーストで話す前に、この共通の基盤を作る必要がある。
ピラミッド → 結論(PREP法)
結論、根拠、具体例、結論
- 最初の結論は最後の結論と同じ内容にする
- 根拠は客観的に判断可能な理由を提示する
- 前に述べた根拠を、よりイメージしやすくするような例を挙げる
- 情報量が多くならないように端的にまとめる
ピラミッド以外のパターン
SDS法
概要(summary) 詳細(Details) 概要(Summary)
- 最初の概要は相手に覚えてもらいたいことを1つ決めて、それを絶対に覚えてもらいたいということがわかる言い回しで伝える
- 詳細では、最初の概要の解像度を上げる
- 最後の概要では、情報量が多くなりすぎると相手に内容を覚えてもらいにくくなるので、端的にまとめ上げるのが大事
相手に伝えたい情報の中で、序盤と終盤に伝えた情報が中盤に伝えた情報よりも記憶に残りやすくなる。これは認知心理学において「初頭効果」と「親近効果」と呼ばれている
具体例
- 現在、ログイン画面の修正対応を進めています
- 具体的には、文字入力のサジェストがうまく機能しておらず、原因を特定中です
- 今日中に原因を特定して、コードの修正に取り掛かろうと思います
(結論 → 詳細 → まとめ といった流れだがSDS法はこんな感じでいいみたい)
TAPS法
理想の姿(To be), 問題を抱えた現状(As is), 問題(Problem), 解決策(Solution)
相手に何かしらの提案をしたいときに使える型
- 最初に相手のあるべき理想の姿を確認する
- 問題を抱えた現状を指摘する
- 相手にとって耳の痛い情報なため、できるだけコンパクトに指摘する
- 問題を指摘する
- 理想と現状のギャップを埋めるために解消すべき問題を指摘する
- 解決策を提示する
いろんな型に共通するエッセンス
話していくにつれて、話の解像度をあげていく
話の解像度を徐々に上げていくことで、相手の「聞きたい!!」「もっと知りたい!!」という興味を引き立てることができる。
- 「全体像→具体説明」もしくは「抽象 → 具体」の順序
全体像や話の大枠を示す。
↓
具体的な説明をする。
この順序で話すことで認知科学的に理解が促進される。
- 「知らない→知っている」の順序
先にあえて相手が知らなそうなことを話す。その後徐々に詳しく説明していく
ex) 「用語解説」の型
相手がある用語を知っているか最初に確認する
↓
その用語の定義を一言で伝える
↓
用語そのものの意義やメリットを伝える
↓
具体例を出す
- 「難しそう→簡単そう」の順序
先にあえて相手にとって理解が難しそうなことを話す。その後徐々に詳しく説明していく。
ex) 「咀嚼」の型
相手にとって理解するのが難しそうな情報を先に提示する
↓
噛み砕いた言い回しで伝える
ex) 「分類」の型
先に相手に理解してもらいたい対象を列挙する(この時点だと相手はよく理解できない)
↓
分類するグループ数とそのグループ名を示す
↓
最初に列挙した対象を各グループに割り振る
聞いている相手の様子を適宜伺う
どんなに有効な型を知っていて、それを実践していても聞いている相手の状況を無視していたら効果がない。
例え十分な説明をしたとしても相手にそれが伝わっていなそうなら、適切なタイミングで説明を区切って相手の理解度を確かめる。
説明力向上のために今日から行えるアクション
型なんて覚えられない!という人が多いと思う。ただ、このままだといつまでたっても自分の考えた順番で口に出していく説明から脱却できない。
本気で説明力をあげたいと思っている人が、実践すべきアクションが以下である。
「出す」→「選ぶ」→「並べる」
泥臭いやり方であるが、非常にシンプルで実践しやすい。
「出す」
説明に必要な要素を箇条書きで書き出していく。こうすることで頭の中のものを全て可視化することができる。
相手に理解してもらうためにはどのような要素が必要か、思いつくものを書き出してみる
「選ぶ」
箇条書きで書き出したものから必要なものだけを選び取る。
選び取るためのコツはターゲット思考、つまり話し相手がどういう人間か、何を欲しているのかを考えること。
(ちなみに本によっては「選ぶ」ではなく「捨てる」というふうにして言及しているものもある)
「並べる」
選び取ったものを相手に伝わりやすいように並べる。
ここで「話す順序の型」がとても役に立つ。型を意識しながら選び出した要素を適切な順序に並べる。
こうしてまとまった内容を相手に対して説明していく。
仮説思考
何かを説明するということは一方的な活動ではない。
相手の思考を整理しながら、少しずつ相手の理解に近づけていくこともとても大事。
そこで重要となるのが仮説思考。
仮説思考とは、「正解」がわからない、もしくは「正解」への情報が少ない状況の中で、問題の全体像や結論を考えて仮説を作る思考法である。
例えば休日に友人と遊ぶ予定があるものの、何するかまだ決まっていないという状況があったとする。
その状況下で「何を選ぶか」「それはなぜか」を考える。このときに友人が何で遊びたいかという情報は参考程度に留めておいて、現状を分析してみる。
- 天気予報では猛暑日予想なので、涼しいところで遊ぶのがいいかもしれない
- コロナにかかりたくないので、人混みが少ないところや屋外で遊ぶのがいいかもしれない
- 最近車を買ったので、遠くに行ってもいいかもしれない
このように考えた結果「軽井沢にドライブに行く」というアイデアを思いついたとする(人混みが少し多そうだが、、)。
そこで友人に軽井沢にドライブ行くのはどうだろうかと質問した結果、「遠すぎるからやだ」というレスポンスが返ってきた。つまり最初の仮説は間違えていたということになる。
その後「じゃあ秩父にドライブするのはどうだろうか、軽井沢よりは近いよ」と提案してみる。
このように一つの仮説を立てて、会話の中で方向修正を繰り返して正解を探していくのが仮説思考のやり方である。
大事なことは
- 最初から正解を当てにいかない。少しずつ正解に近づけようという心構えで仮説を立てる
- 考え抜いた仮説である必要がある
最後に
説明のためのテクニックについて色々と調べてみたが、ワーキングメモリや睡眠といった基礎となる脳の機能も重要かもしれないので、今度調べてみようかと思う